essay

摂氏二度の周回軌道上で星は踊る - 孤独な星

ALFRDの初映像作品として製作された『孤独な星』のミュージックビデオ。その企画コンセプトや製作秘話を振り返る。

Text: Ryuuta Takaki

天体の回転運動

決して交わることのない(軌道上の)、それでいて求め合う(万有引力によって引き合う)二つの存在(恒星と惑星)

これがこのMVの企画会議にて共有された難解なコンセプトである。この壮大な探究の物語を映像化するにあたり、空間的演出的なスケールを持ち込むことも出来たかもしれない。ただ、在り来たりの荘厳さを表現しようとしていたならば、このミュージックビデオは唯一無二の存在感を持ったビデオとして産み落とされる事はなかったのではないだろうか。

星々の廻り巡る物語を演出的なスケールではなく、プリミティブな身体表現によって描写することに挑んだのが本作でコレオグラファー件ダンサーを担当した野口煕子(スターダンサーズ・バレエ団所属)である。

彼女のしなやかでありながら荘厳なその身体表現は、撮影を迎えるまでに何度も推考され、また彼女にとっての挑戦的な技術を持ち込み、それを習得することによって大胆かつ正確にコンセプトを表現している。

Dancer: Kiko Noguchi

この天体ショーをあからさまな大地で表現する上で、もう一つの鍵となるのが映像監督、中村俊介による徹底的に現実性を削ぎ落とした映像表現である。

暗い夜に煌々と光る月明かりの下では、世界は奥ゆかしい清淑さを持つ。ライティングや光と被写体の位置関係、画面上で暗所の占める割合などが計算され、ミニマリズムに裏打ちされた描写は、踊りを、コンセプトを、延いては楽曲の持つイメージをも最大化している事は間違いない。

そしてこれらの夜の世界の表現は、輝けずに彷徨い、いつも通り眠る、というクライマックスに向け、日の光の世界を写す事によって一つの満ち欠けの終わりと、同時に始まりを写す。交わることのなかった二つの星を、昼と夜という円環によって端的に表しながらも、最後に差し込まれる二つの映像によって観る者に解釈の余白を与える。

徹底的な現実性の排除

Videographer: Shunsuke Nakamura

2019/2/16 気温、摂氏2度

スクリーンショット 2020-12-23 1.27.47
野口煕子作「監督、中村俊介」
各自無言のドカ食い - 早朝、撮影後のすき家にて
休憩中
バッティングセンターにて
高幡不動あんず村
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