makranの2020年を総括

FEATURE

makranの2020年を総括

ALFRDのリリースから2020年を迎え、Shnayhon Yoso、Autumn Fruit、Madness Pin Drops、そしてSOMESEEGAIA、makranの6アーティストの楽曲が出揃った2020年。リリース楽曲やMVと共に総括。

Text: Ryuuta Takaki

相反する二つの温度

2020年、ALFRDは連続リリースを通して可能性を拡張し続けてきた。

先ず、ガラス辺が割れ砕け散るような、LAビートシーン譲りのサウンドに乗せメラメラと燃えるような権力構造へのアンチテーゼを、鏡というモチーフを通して照射する『Who』に始まる。

続く『眺める』ではその温度感を一転させ、静かに波立つ青年の心境がその視点で綴られる。大切な誰かの涙が雨となり流れ出し大海原に溢れ出るまで、見ていることしか出来ないという無力感が、風が吹き渡る砂丘に唯一人佇むかのような、又は空空漠々と果てしない石壁に目の前を塞がれるような気持ちにさせる。

Artwork: Ryuuta Takaki

Photography: 佳里奈

3月、初リリースを控えていたアーティスト達の楽曲が連続でリリースされる。

先ずリリースされたのがAutumn Fruitの1stシングル『Abyss』。

楽曲の濃密で官能的な世界観を持った原曲はAutumnとその親友であるKureがロンドンにて共作したバラード。(原曲となるアコースティックVer.はM4に収録)。カップリング曲にはディスコクラシックとチルウェイブの名作のエッセンスを落とし込んだAfter partyを収録している。また、このシングルのアートワークは楽曲、Abyssの歌詞カードとなっている。

Artwork: Ryuuta Takaki

Artwork: Ryuuta Takaki

煙燻らす昨夜の残香

続いて名古屋出身のシンガー、Madness Pin Dropsの1stミニアルバム『Interference』。

干渉を意味するInterferenceというタイトルが示すように、優美さとダーク、繊細な歌声と真の太いビート、アンビバレントな要素で構成された楽曲群は、初作ながら既にMadness Pin Dropsの世界観を作り上げている。

彼女が名古屋から東京へ向かう深夜バスの期待と不安が入り混じる精神、そして窓から見える溶け出すネオンの光をピーチアンドオレンジに喩えたFuzzy Navel等、パーソナルな世界も詩的に表現されている。

融解する危うい優美さ

Photography: Ryuuta Takaki

Artwork: Ryuuta Takaki

思索の燃焼と灰燼

連続リリースの最後を飾るのはこの作品、Shnayhon Yosoの『elme』。

実制作期間2年半のアーティスト自身の様々な思索の樹木が、芽吹き幹を伸ばし葉を咲かせ実り枯れ落ち、落雷に打たれ、やがて大海原を超えて漂着する流木。

プロデュースには、アルバムの流れを加速させるGMTでstei 、深淵な世界をさらに深く掘り下げるBlack StuffでYUNG RIZLA、表題曲elmeのリミックスには脱構築的なサウンドクリエイションを得意とするKishiohnoが参加。

受験期間という長い休止期間を経ながらも、一切手を加えられることはなくその時の勢いをそのままにリリースされている。

Photography: Hayato.R.Kusakabe

Artwork: Ryuuta Takaki

自我と時間、空間と実在

先の連続リリースからは少し期間を空け、2020年makran最後の刺客としてSOMESEEGAIAのリリースとなる『SSG』。 自己と他者、顕微鏡で覗く広大無辺、乱反射するアイデンティティ、時の集積としてのモノリス、関係性やスケール感が万華鏡の様に交錯しながら一つの結晶となる作品集。 エレクトロニカシーンに積み上げられてきたIDMサウンドにJ-POPやR&Bのエッセンスが加わりポップスを新たな領域へと誘う。

リミキサーには繊細でメロウなエレクトロニカを得意とするmetomeが参加しガラス細工の様な世界観を付け加えている。

架空の個性であるSOMESEEGAIAの世界観を見事にアートワークで表現するのは気鋭のCGアーティストサエコ

Photography: Ryuuta Takaki

CG: Tomoya Utsuno

2nd-half/下半期

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カフェテラスにて/深海より

ALFRDの連続リリースは夏を前に、季節感も意識しつつ、関係性や距離についての然々を題材としたものになる。

すれ違う二人をテラス席で歌い、サウンドもトレンドを抑えたミドルバラードの『404』

そしてよりALFRD的な情景世界とDubbyなサウンドをクロスオーバーさせた『Anywhere』。Anywhereのシングルアートワークは、兼ねてより彼と深い親交を持ち、孤独な星でスチールを担当した井崎竜太郎が参加している。

Photography: Ryuuta Takaki

Artwork: Ryuuta Takaki

Photography: Ryutaro Izaki

社会的にマイノリティとされる立場の人々や、ストリートやインディペンデントの主張を宿し楽曲としても映像としても高い完成度で放ったALFRD2020年の最新シングル。

とりわけ現在世界的な問題となっている人種差別や思想弾圧へのカウンターを力強く発進した作品となった。

MVではこの秋長編映画『JOINT』を公開し若手映像作家として強く注目される小島央大を監督に迎え、時代の抱える問題、ユースたちの生の声や姿を高い鮮度で切り取った作品となっている。

キャストにはKebab Channelのメンバーをはじめ、様々なバックグラウンドや立場を持ったユース達が集結。まさに新東京像を写している。

既存の価値観に楯突く

Artwork: 小島央大

Kebab Channel
Meng Du (AME)
Rena & Akane

海峡を跨ぎ行着く先

1stミニアルバムとは系統を変え、よりディープでダークな世界観を強めた本作『CRY』寄せては返す波のような感情、その先にある深海のような静けさ。

Madness Pin Drops本人の幼少期の記憶を反映しながら美しい言語感覚でその寒さや孤独が伝わるような楽曲に仕上がっている。

陸海空と壮大な撮影スケールをミニマルな世界観に仕上げ、後半まで淡々と表情を切り取る展開が挑戦的なMVも必見。

Artwork: Ryuuta Takaki

胡椒銃に八角手裏剣、果物爆弾炸裂

来たれ音楽の大航海時代。インターネット以後の世界、広大無辺に広がる音のスパイス&ハーブ。Autumn Fruitサウンド大爆発する本作『Tavern Garam』

前作の官能的世界観とは一転し、Dub やレゲトン、ドラムンベース、ボリウッド音楽、胡楽(シルクロード音楽)を取り入れたサウンドとキャッチーでポップなメロディーセンス、映画のような歌詞世界とが絶妙に絡み合う、一皿のスパイスカレーのようにカオスな世界に誘う作品。 シタールのサウンドやボリウッド音楽を取り入れたOn my way、アジア民謡のエッセンスにDub をクロスオーバーさせたLet all the demons in、シルクロード文化のサウンドをミックスしたHate youなど、古今東西の音楽世界地図のような作品となっている。

Artwork: Ryuuta Takaki

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摂氏二度の周回軌道上で星は踊る

essay

摂氏二度の周回軌道上で星は踊る - 孤独な星

ALFRDの初映像作品として製作された『孤独な星』のミュージックビデオ。その企画コンセプトや製作秘話を振り返る。

Text: Ryuuta Takaki

天体の回転運動

決して交わることのない(軌道上の)、それでいて求め合う(万有引力によって引き合う)二つの存在(恒星と惑星)

これがこのMVの企画会議にて共有された難解なコンセプトである。この壮大な探究の物語を映像化するにあたり、空間的演出的なスケールを持ち込むことも出来たかもしれない。ただ、在り来たりの荘厳さを表現しようとしていたならば、このミュージックビデオは唯一無二の存在感を持ったビデオとして産み落とされる事はなかったのではないだろうか。

星々の廻り巡る物語を演出的なスケールではなく、プリミティブな身体表現によって描写することに挑んだのが本作でコレオグラファー件ダンサーを担当した野口煕子(スターダンサーズ・バレエ団所属)である。

彼女のしなやかでありながら荘厳なその身体表現は、撮影を迎えるまでに何度も推考され、また彼女にとっての挑戦的な技術を持ち込み、それを習得することによって大胆かつ正確にコンセプトを表現している。

Dancer: Kiko Noguchi

この天体ショーをあからさまな大地で表現する上で、もう一つの鍵となるのが映像監督、中村俊介による徹底的に現実性を削ぎ落とした映像表現である。

暗い夜に煌々と光る月明かりの下では、世界は奥ゆかしい清淑さを持つ。ライティングや光と被写体の位置関係、画面上で暗所の占める割合などが計算され、ミニマリズムに裏打ちされた描写は、踊りを、コンセプトを、延いては楽曲の持つイメージをも最大化している事は間違いない。

そしてこれらの夜の世界の表現は、輝けずに彷徨い、いつも通り眠る、というクライマックスに向け、日の光の世界を写す事によって一つの満ち欠けの終わりと、同時に始まりを写す。交わることのなかった二つの星を、昼と夜という円環によって端的に表しながらも、最後に差し込まれる二つの映像によって観る者に解釈の余白を与える。

徹底的な現実性の排除

Videographer: Shunsuke Nakamura

2019/2/16 気温、摂氏2度

スクリーンショット 2020-12-23 1.27.47
野口煕子作「監督、中村俊介」
各自無言のドカ食い - 早朝、撮影後のすき家にて
休憩中
バッティングセンターにて
高幡不動あんず村
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海蛇座の心臓 – ALFRDの1stアルバムを振り返る

essay

海蛇座の心臓 - ALFRDの1stアルバムを振り返る

ALFRDの、そしてmakranの第一号リリースとして世に放たれ、早くもリリースから1年弱の時間が経った今、改めてALFRDの1stアルバム『ALFRD』をプロデューサー視点で振り返る。

Text: Ryuuta Takaki

海蛇座の心臓
赤い光

“春の星空に東西に大きく跨る星座を見てみましょう。これは88星座の中で一番大きな星座、海蛇座です。海蛇座の心臓部分で赤く輝く星が見つかるのではないでしょうか。この星は周囲に目立つ星がなく、寂しげにポツンと輝いていることから、アラビア語で「孤独なもの」を意味するAlphard(فرد|الفرد)という名が付けられました”

そんな何気ないプラネタリウムのガイドを聞き、彼の頭の中で歯車のカチリと噛み合う音がしたのだろう。おそらく当時の彼の心境や音楽活動への姿勢に重なったのか、彼はその聞き慣れない星の名前を新宿の珈琲西武に持ってきた。

「名前これで行こうと思うんですけど」

ALFRD、新宿珈琲西武にて爆誕

Photography: Sorami Yanagi

Hair & Make up: Tomoca Kitsunai

Photography: Ryutaro Izaki

Collage: Ryuuta Takaki

ピアノによる4つのコードのループ、硬度の高いベースと当時としてはオールドファッションに思えるブロステップ的ビートパターン。 デモソング”sadi.wav”をALFRDに渡す。

そのsadiというデモは、のちに『孤独な星』と名付けられ、その後のALFRDの方向性を決定的に運命的に指し示しす事となる。そして彼自身の存在そのものを表す一曲となった。

sadiを一通り録音した帰り道、夜空の彼方に一筋の迅雷が走る。その暗闇を裂いた光の筋は強烈なイメージをALFRDの脳に焼き付けたに違いない。孤独な星の歌詞、宇宙から飛来した者というALFRDの設定、のちに製作されるミュージックビデオ、その随所に一筋の迅雷が象徴するイメージが散見される。そしてその雷によって本当にALFRDという人格が彼の中に宿ったのかもしれない。

或る夜の落雷

Video Director & Camera : Shunsuke Nakamura

Dancer: Kiko Noguchi

深宇宙への処女航海

海蛇座に住む青年が、地球という惑星からある便りを受け取り、孤独な宇宙の旅をする。これが『ALFRD』の軸となる設定である。

離陸の一曲目となるTONIGHTに始まり、深遠な宇宙を漕ぎ出すKAI、光を捉え引力によってスイングバイするように加速すRIDE/HYDRA (prod.KRICK)、淡い記憶と忘却の狭間で微睡むようなOBLIVION(prod. Makoto Nagata)と続く。そしてアルバムはここまでの流れが第一部として構成されている。続きの物語は是非アルバムをお聴きいただければ、、

このように本作は量子論や光の性質を暗喩するセンテンスが綴られた一編のスペース・オデッセイとしても構成されている。

一方で、サウンドはJ-POPを主軸にしながらも、ハウス色の強いダンスチューンに始まり、IDMを匂わせる砂嵐のようなTrap、寝室で一人歌うように紡がれるLo-Fiヒップホップまでジャンルを広く横断する。ゲストプロデューサーにOpus Innの永田誠、BLACK BASSのKRICK、IPPEIを、客演にはmakranからShnayhon Yosoを迎えアルバムは完成する。

こうして海蛇座の星座位置を表すアートワークとともに、静かで広大な深宇宙への航海が始まったのであった。

Artwork: Ryuuta Takaki

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